お米と金曜日

残しておきたい感想なんかを書くブログ。妄想多め

スター☆トゥインクルプリキュア 第五話 の感想

人を惑わす月明かり、揺れる心は誰のもの?

何に照らされ何を照らすか、月の女神は道半ば。

四人目加入のスタプリ第五話、行ってみましょう。

・秘密の変身☆ お嬢様はキュアセレーネ!

今回はまどかさんの加入回なんですが、キャラとして課題が多い分ざっと全体の見取り図を描くに留めたかな、という印象です。

課題の説明や解決を見送って今のまどかさんの描写に時間を割いてくれた前半は、彼女を閉じ込める透明な檻のような空気を上手く感じ取れるようになっていたと思います。

才能はある、努力もしている、結果も出ている。でもそれが何処に続いているか分からない。父の言う頂点とは何処にあって、積み重ねたトロフィーは何処に届くのか。彼女はずっと迷っているように見えます。

「香久矢家の人間」として具体的な目標を定めるのはそんなに難しいことでは無いでしょう。父のように政府高官を目指しても良いし、母のようなピアニストでも、弓道を極めるでも、幾らでも道はあると思います。でもまどかさんが迷っているのはそういう事ではなくて、恐らく彼女自身の「心の在処」だと思います。

テストでは満点を取って先生に名指しで褒めてもらえる。学校の行事も大成功させ、皆から称賛される。でもきっとそんな事はどうでもいいのです。(ちょっと言い過ぎ。褒められた事自体は、誇らしいし喜んでもいると思う)

何か思い悩んでいる事に気付いて欲しい。会議中にぼーっとしていたら理由を聞いて欲しい。的を外したら、心を説くのではなく、心の内を尋ねて欲しい。年相応にそんな事を思っている自分を、まどかさんは持ち前の優秀さで覆い隠してしまいます。

放心していても、指摘された次の瞬間にはいつもどおりに会議を進行させる。香久矢家の務めを押し付けられても、そういうものだと納得してしまう。そうしてやっていけるだけの力があって、それが正しいとも思っている。自分は香久矢家の人間。観星中の生徒会長。皆の期待を背負って、皆の規範となる。清く正しく美しく。香久矢まどかは憧れの月―。

 

本当に?

 

その疑問を掘り下げていくのがまどかさんの当面のグランドクエストになるのかな、と思います。

友人にも家族にも期待と尊敬で距離を置かれ、自分の真ん中に踏み込んでくれる人が居ない。今回宇宙人のララフワプルの報告を迷ったのは、元々そうして自分の道を見失いかけていた部分と重ね合わせた描写だったのでしょう。あるいはその重い停滞を破る未知との出会いを、まどかさんはどこかで望んでいたのかもしれませんね。

・少女は月を見上げて何を想う

月に叢雲、月をまどかさんに見立てるとしたら、雲は何か、という部分を日常の中でじっくり見せることで、少々駆け足ながら「何故香久矢まどかはプリキュアになるのか」という理由付けは出来ていたと思います。

 まどかさんの人生は一見順風満帆です。しかし彼女をメインで映す時、画面はやはりどこかに孤独や息苦しさを抱えていて、BGMも神秘的ながら暗いトーンで流れています。夜に窓から空を見上げるシーンでは、輝く満月を雲が覆ってしまいます。

完璧に見えて一番大事なモノが欠けている。まどかさんはその心の空白を埋める「何か」を求めて、新たな世界に一歩踏み出します。その一歩を後押ししたのが主人公と妖精なのは作品として強いところですね。

今回まどかさんの心を決定的に動かしたのは、ひかるとフワの真心でしょう。フワがどんな気持ちでまどかさんに懐いたのかは謎ですが(プリキュアになれる素質の有無を見分けられるのか、単純に好意的に思える相手だったのか)、フワは無邪気にまどかさんに甘えて好意を示し、元気がないように見えたらおにぎりを差し出します。打算でなく、下心でもなく、レッテルの無い「香久矢まどか」という個人を、ただ純粋に慕って心配してくれます。そういうストレートな心のキャッチボールが、立場上彼女の周りでは起こりにくいというのはAパートで語られていました。こうしたピュアなヒロイン性を幼さとして発揮出来るのは、フワのキャラ造形の良いところですね。

真っ直ぐさで言えばひかるも負けていなくて、今回まどかさんに宇宙人の皆を報告しないでと頼むとき、彼女の言い分はあまりにもシンプルです。友達だから、大事な仲間だから、見逃して欲しい。一緒に居たいの。決して、悪い宇宙人じゃないよ。発言になんの保証もないし、そもそも交渉になっていません。でもひかるは真剣で、友達のために必死に頭を下げます。その愚直さもまたまどかさんには縁遠いもので、故に強く胸に響いたのも想像に難くありません。

そうして揺らぐまどかさんに、ひかるは的確にクエスチョンを投げかけます。「父に報告する義務としきりに言っているけど、まどかさん自身はどうしたいの?」と。こういうボールが即座に出てくるあたり、やっぱりひかるは意外と周りをよく見てますね。お話の都合とか言わない。

とっさに投げ返すには重い問なので、パワーを溜めるために今日もノットレイダーの皆さんが出張って来てくれます。今回も幹部はてんぐさん。

フワをまどかさんに預け、プリキュア三人は交戦に入ります。にしても戦闘員は毎回結構な数いますが補充とかどうしてるんですかね…。

まどかさんも初めて遭遇する鉄火場に足が竦んでテンジョウに見つかってしまいます。戦闘員の皆さんに囲まれて、思い出すのはさっき受け取った真心。フワを守ると言い、実際に目の前で戦っているひかる。自分の胸にいるフワの、気遣いと優しさ。それを受けて、「香久矢まどかはどうしたいのか」。

敵には渡したくない、渡せない。フワを守りたい。その想いがスターカラーペンダントを生む。でも今まで培ってきた常識が、香久矢家の呪縛が、それを掴む手を止めてしまいます。分からないと、これが正しい行いなのか、自分はどうすべきなのか。

その逡巡を断ち切るのは、ひかるの問い。「正しさ」じゃない、「べき」じゃない。あなたの心が「したい」と向く先は。

そうしてまどかさんは、私はフワと皆を守る、知った上で放っておけはしないのだと、気高い決意を叫びます。誰に決められたわけでもない、己で己を定義する決断。欠けたアルテミスから、満ちゆくセレーネへ、香久矢まどかという月の大きな一歩。

さぁ高らかに、謡えよキュアセレーネ!

・宇宙の戦士と月の女神

セレーネの変身バンクは流し目だったり吐息だったり、月が持つ妖しさと神々しさがばっちり決まって素晴らしいですね。

無事変身出来たセレーネは、武道の心得があるからか、射手だけでなく近接での見切りもこなせる達人ぶりで中々の強キャラ感でした。天狗風戦法もなんのその。変身や必殺技の月を弓にしてペンで矢を作る演出はスタイリッシュさとケレン味があってかなり好きです。

さて戦闘後のお父さん接近遭遇イベントは、プリキュア変身のときに見せた決意を日常パートに落とし込む大事な部分ですね。局長なのにしっかり現場でお仕事して、部下の手本になろうとするお父さんは多分悪い人じゃないと思います。まぁまどかさんにも親としての愛情があればこそのあの教育なんでしょうけど、現状「こうあるべき」という理想の押し付けになっている部分がどうしても目立ちます。まどかさんもそう思う部分もありながら、父を尊敬し慕っていればこそ家の方針に従っていたんでしょうが、やっぱりその構造はどこか歪です。そのうちきちんと話し合う回が来ると思いますし、香久矢家の今後の動向にも期待ですね。

今回まどかさんが父についた嘘は、まどかさんの成長であり、自立心であり、親子のすれ違いでもある結構難しいアイテムです。取り扱いを間違えると物語内での「思春期の少女の成長と家庭」におけるリアリティが崩れてしまうわけですが、今回ちょっと分かりづらいながらも親子が互いを想い合っている描写はあったので、色々あっても最後は良い所に収まるんじゃないかな、という予感があるのはいいですね。

まどかさんも第一印象よりは大分純情な感じで(失礼)、あまり嘘とかつくのは得意じゃなさそうですが、他三人がめちゃめちゃ顔に出るタイプなので自然と交渉事とかはまどかさんがやることになりそうですね。にしてもひかるちゃん嘘が下手すぎる…。相手が姫ノ城さんじゃなければ通らないよそれ…。

しっとりまどかさんを見せる合間に三人組が仲良くやってるシーンもありましたね。一緒に登校してたり、放課後はロケットに集合してたり、同じ秘密を持った仲間!って感じが深まってて良いと想います。ララはすっかりひかるに気を許したようで、「ひかるのおにぎり大好きルン!」と素直にデレていました。仲良きことは美しきかな…。前々回あれだけぶつかった甲斐がありましたね。

個人的にララちゃんには「サマーンに敬語は無いルン」についてもう少し詳しく語って欲しいわけですが、惑星サマーンを掘り下げる尺はあるんですかね…?

話は変わりますが、今回ちょっと気になったのはネーミング。スター、ミルキー、ソレイユときて、セレーネ?一人だけ宇宙に関する用語じゃなくて月の女神の名前なのは何故なんでしょうか。

心当たりは二つあって、一つはスタンスの違い。他の三人は友達を守るとか、お仕事とか、笑顔とか、根っこは違えどプリキュアの活動自体がプリキュアを続ける目的です。でもセレーネことまどかさんはプリキュアでの活動を通して「宇宙人関連での父の負担を減らす」という別途明確な目的があります。今のところ矛盾はありませんが、ひかるが地球の宇宙人と融和路線をとったり、ララが星の仲間を呼ぶようなときはまどかさんの目的と食い違ってしまうわけで、そのあたりの距離感を表したものなのかもしれません。

もう一つは心当たりというか既視感ですね。シリーズの先輩であるスイートプリキュアを観ていたときに似たようなことがありました。その時も丁度四人目加入のあたりで、スイートのプリキュアは音楽関連の用語で名前が付いていたんですが、メロディ、リズム、ビートときて四人目がミューズだったんです。何故?と思いましたが、スイプリはその時敵の大将がメフィストプリキュア方の大将がアフロディテという名前だったので割とすぐピンと来ました。あぁその辺りに縁のある出自だから音楽の女神の名前なんだなと。(実際どうだったかは今更ですがネタバレを気にして伏せます。気になる方はスイプリ面白いので是非観てみて下さい)

では今回セレーネが女神の名を使った理由なんですが、スタプリには他に神様の名前を持ったキャラは居ませんよね。強いて言えばスタープリンセスがそれっぽいですが、彼女たちはあくまで星座のプリンセス。スイプリと同じように出自の由来と考えるとイマイチ当てはまる設定が無いように思えます。では神様の意味を作品モチーフの宇宙に合わせて拡大してみたらどうでしょう。宇宙人も時代や文明レベルによっては神様と言えるかもしれません。そこで注目するのがまどかさんの姓、そう「香久矢」という名字です。かぐやと言えばもちろんかぐや姫。つまりキュアセレーネのネーミングは私が前回推した「香久矢家のご先祖様かぐや姫説」を示唆するものかもしれないということです!すごい適当言ってただけなので補強材料にこじつけられて一番びっくりしたのは私です。

そんな感じでスタプリ五話、楽しませて頂きました。全体的に今後への前振りという色が強かったですが、まどかさん周りの情報をがっつり載せてきちんとエモい話に仕上がっていたと思います。次回は謎の新機器ダークペン登場ということで、スタプリは浄化のお話とかもやるんでしょうか?楽しみに待ちたいと思います。

・おまけ

なんか一条の一族みたいなお嬢様口調のキャラが居ると思ったら声がたいちょーでびっくりしました。これからは姫ノ城ダグラスさんの活躍をこっそり楽しみにしながら視聴を続けたいと思います。